EUのMiCA規制がブロックチェーン業界に与える影響と事業者の対応
欧州連合(EU)で2024年末までにすべての施行が予定されるMiCA(Markets-in-Crypto-Assets)規制は、クリプト業界に大きな影響を与える可能性があります。本記事では、MiCA規制の背景、概要、および事業者が留意すべき点について解説します。
1. MiCA規制制定の背景
クリプト資産は、その革新性と利便性から急速に普及が進んでいます。一方で、既存の金融規制をクリプトに適用することが困難であり、消費者保護と市場の公正さを確保するための新たな規制の必要性が指摘されてきました。MiCA規制は、こうした状況を踏まえ、EUにおけるクリプト資産の統一的な規制を目指すものです。
2. MiCA規制の概要
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2-1. アセット分類
MiCA規制では、まず「crypto-assets」という広範な概念を定義しています。その上で、適用除外となる類型(従来の金融規制の対象となるものや、NFTなど)を指定し、残りのcrypto-assetsを以下の3種類に分類しています。
・e-money tokens:単一の法定通貨にペグしたステーブルコイン
・asset-referenced tokens:複数の法定通貨やその他の資産にペグしたトークン
・その他のcrypto-assets:上記以外のすべてのcrypto-assets
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2-2. 規制対象となる主体と行為
MiCA規制の対象となるのは、自然人と法人の両方です。ただし、完全にdecentralizedな態様でサービスが提供される場合は、規制対象外となる可能性があります。
規制対象となる行為は、以下のように幅広い範囲が含まれます。
- ・カストディ
- ・取引所運営
- ・交換
- ・マーケティング
- ・アドバイス提供
- ・ポートフォリオ管理
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2-3. 発行者の義務
Crypto-Assetの発行者には、以下のような義務が課せられます。
- ・投資家保護のための詳細なホワイトペーパーの作成
- ・公開前の適切な機関への通知
- ・ホワイトペーパーの更新
- ・利益相反の防止と開示
- ・効率的な管理手続きとセキュリティ基準の維持
- ・リテール投資家への撤回権の付与
- ・投資家の最善の利益のための行動
- ・集めた資金の監視と保護
- ・キャンセル時の資金返還
- ・適切なマーケティングコミュニケーション
3. 事業者が留意すべき点
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3-1. 規制対応の準備
MiCA規制は、2024年中盤から末にかけて段階的に施行される予定です。事業者は、自社のビジネスモデルがMiCA規制の対象となるかを検討し、必要な対応を進めていく必要があります。特に、ホワイトペーパーの作成やセキュリティ基準の確保など、発行者の義務への対応は重要です。
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3-2. decentralizationの程度の評価 MiCA規制では、完全にdecentralizedなサービスは規制対象外となる可能性が示唆されています。事業者は、自社のサービスがどの程度decentralizedであるかを評価し、規制対象となるかを見極める必要があります。ただし、「完全にdecentralized」の判断基準は現時点では明確ではなく、今後のガイドライン等での明確化が待たれます。
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3-3. 専門家の活用とリスク判断 クリプト業界は急速に発展しており、規制の詳細も明確になっていない部分があります。事業者は、弁護士などの専門家の助言を得つつ、自らリスクを判断していくことが求められます。特に、グローバルに展開する事業者は、各国・地域の規制動向を注視し、適切な対応を取ることが重要です。
4. 今後の展望
MiCA規制は、EUにおけるクリプト規制の先進的な取り組みとして、他の国・地域の政策形成にも影響を与える可能性が高いと考えられます。また、MiCA規制の施行までには、一部の規定の適用除外などの経過措置も設けられる予定です。事業者は、こうした動向を注視しつつ、適切な対応を進めていく必要があると考えられます。
弊所のSubstackの記事により詳細に記述しております。よろしければご参照ください。